2011-01-01から1年間の記事一覧

「恋の罪」 園子温

言葉には距離がある。言葉をただその言葉として知っているだけでは「意味」がない。経験によって、言葉とのその距離を縮めてゆき、その距離がゼロになるとき、(大学助教授の美津子(冨樫真)が語るように)言葉は「肉体」を持つ。ある本を読んで、そのとき…

2011年ベスト

映画部門(ベスト10) 1.「ヒア アフター」 クリント・イーストウッド 1.「東京公園」 青山真治 1.「NINIFUNI」 真利子哲也 1.「5windows」 瀬田なつき 1.「サウダーヂ」 富田克也 6.「ザ・ウォード」 ジョン・カーペンター 6.「ゴーストライター」 ロマン…

暗黒街の図書館

夜7時くらいだろうか。昨日、人通りの少ない真暗な坂を抜けて、既に閉館している図書館の前を通ると、入口の自動ドアに「ファーブル昆虫記」が立てかけられていた。 「きっとブックポストを知らない小学校1,2年生の、勉強熱心なぼうやが置いていったんだ…

サウダーヂ・オールナイト

23日(金)にオーディトリウム渋谷で、空族の「サウダーヂ」、「国道20号線」、そしてエドワード・ヤンの「恐怖分子」の3本立てサウダーヂ・オールナイトが開催される。エドワード・ヤンの「恐怖分子」は、渋谷のツタヤに行けばヴィデオテープがあるけ…

冬といえば

僕が小学校5年生の冬だったろうか。帰宅すると、兄さんの友人たちが家に遊びに来ていて、ストーブで十分に温められた畳の部屋で、プレイステーションの「メタルギアソリッド」をやっていた。それまで「スーパー・ドンキーコング」と「クラッシュ・バンディ…

クリス

例えばの話だが、「ハンター×ハンター」では、蟻編で、旅団のボノレノフが蟻と闘うときに「ギュドンドンド族」の説明に入るところ。「バキ」にも色々あるが、例えば、「現場にいた会社員の○○は後にこう語っている・・・」と、第三者の供述に入っていくところ…

「アメリカの友人」 ヴィム・ヴェンダース

誰もがみな、カセットテープに録音した自分の声を聴いて、そのあまりの気持ちの悪さに仰天したことがあるだろう。そして「これは僕の声じゃない」と主張する。が、周りの人間は「いや、お前の声だ」と言う。卒業アルバムに写る自分の肖像を見て、愕然とした…

キェシロフスキ

クシシュトフ・キェシロフスキは最も好きな映画監督の一人だ。 「殺人に関する短いフィルム」「愛に関する短いフィルム」「ふたりのベロニカ」「デカローグ」・・・・どれも大好きだ。僕の名である「屋築」も、「殺人に関する短いフィルム」の主人公「ヤチェ…

「クリムゾン・キモノ」 サミュエル・フラー

ドゥルーズ「シネマ1」の第12章では、ヌーヴェルヴァーグの「パロディ」について語られている。「パロディ」一般についての考察にもなっているので、僕らがももいろクローバーについて考える際にも、この章は重要なヒントを与えてくれる。 新しいイメージ…

巨人の星

大澤真幸の「虚構の時代の果て」(ちくま新書)、「不可能性の時代」(岩波新書)を大分前に読んで、この2冊は「距離」について大きなヒントを与えてくれ、僕にとってはすごくためになった。 その大澤真幸著の「美はなぜ乱調にあるのか」(青土社)のスポー…

「けいおん!」 山田尚子

「けいおん!!」2期の20話。文化祭での最高のライブを終えた後、夕暮れの部室の隅で、放課後ティータイムの皆が座りこんで会話をするシーン。「最高のライブだったね」。彼女たちは、今日のように、これからも続くであろう素晴らしい時間について、楽し…

「監督失格」 平野勝之

昨日、東京造形大学でのペドロ・コスタによる特別講義でペドロは、「大人になること」について「大人になるとは、「こんにちは」、「さようなら」が言えるようになることだ」と語っていた。そしてペドロは、フリッツ・ラングの「ムーン・フリート」を引用し…

クリシェ

今日やっと「nobody」36号・「サウダーヂ」特集を購入し読み始めたところ、早速、廣瀬純さんの文章「OUTRA VEZ...,MAS!」に感動させられている。 「クソとはクリシェのことであり、クリシェがそっくりそのまま生きられてしまうという事実のことである。」・…

「東京上空いらっしゃいませ」 相米慎二

牧瀬里穂の演技はヘタクソと言えばまったくヘタクソだし、鶴瓶はやはり鶴瓶でしかないし、中井貴一も(「今の僕らにとって」にすぎないかもしれないが)ミキプルーンにしか見えない。そして僕個人としては、30を過ぎてフレッシュさを失ってしまった牧瀬里…

「あ、春」 相米慎二

東京フィルメックスの相米慎二特集で「あ、春」と佐藤浩市のトークショーを見た。亡くなって病院のベッドに伏している笹一(山崎努)の服の中で、笹一が温めていた鶏のタマゴが孵っているという感動的なシーン。言葉にしてしまえば、失敗に終わること間違いな…

土日

土曜日、聖蹟桜ヶ丘でやっている多摩映画祭に行った後、府中に住んでいる友人のナカガワ君宅に泊まらせていただいた。 朝、熱いブラックコーヒーを淹れてくれたり、頼んでもいないのに手作りのフレンチ・トーストを提供してくれたのにはカルチャー・ショック…

君はそう決めた

11月18日にリリースされる坂本慎太郎のアルバム「幻とのつきあい方」。 レンタル開始まで待とうかと思っていたのですが、今日アップされていた「君はそう決めた」を聴いて買うことに決めました。 高校の時にフランの懸賞で当たった、沢尻エリカの音楽ギフト…

「フェア・ゲーム」 ダグ・リーマン

瑛太は瑛太でしかないし、市原隼人も市原隼人でしかない。侍を演じていたって、野球青年を演じていたって、彼らはいつでもどこでも彼らでしかない。横浜の天気予報にいつも映し出される「ランドマーク・タワー」を見るときのように、彼らを見るときには萎え…

「セントラル・パーク」 フレデリック・ワイズマン

駅から大学まで毎日15人は追い抜く。歩く速さにはちと自身があるそんな僕を、軽々と追い抜いていくニューヨーカーたち。ニューヨークの速さには圧倒された。 信号無視は当たり前だ。ゴミの分別も必要ない。時間のムダだ。遅い奴は置いていかれる。 それで…

「乱れ雲」と「犬猫」とハイライト

キネカ大森で成瀬巳喜男の「晩菊」(1954)と(「人のセックスを笑うな」の)井口奈己の「犬猫」(2004)の二本立てを見た。 見事な演出が光っていて、どちらも素晴らしかった。なぜこの二本立てなのだろう。中心的な登場人物として女性が3人出て来るという…

「乱れ雲」 成瀬巳喜男

神保町シアターで成瀬巳喜男の「乱れ雲」を見た。古本まつりが開催されていたので、満席になるかと思いきや、ガラガラだった。 神保町シアターの常連たちは、この成瀬巳喜男の遺作、傑作中の傑作をきっと何十回と見ていて、別に今日見る必要もなかったのだろ…

東京造形大学

映画監督の諏訪敦彦さん、写真家のホンマタカシさん、建築家の鈴木了二さんによる「「郊外」と「わたし」の居場所」と題されたシンポジウムに参加するために東京造形大学に行ってきた。横浜から横浜線で40分ほどのところにある相原駅(もうすぐ八王子だ)…

「モデル」 フレデリック・ワイズマン

ユーロスペースでフレデリック・ワイズマン特集をやっている。今日は映画1000円デイだったので「モデル」と「ボクシングジム」を見た。「モデル」(1980) ニューヨークのモデル事務所に所属するモデルたちや、彼らを取り巻くカメラマンやエージェント、…

鎌倉旅行

横浜から北鎌倉まで横須賀線で一本、290円で行けることは知っていて、2年前からずっと行こう行こうと思っていた。 怠慢からずっと行かなかったのだが、今日やっと行けた。「無」という一文字が刻まれた、「東京画」でヴェンダースも訪れていた小津安二郎の…

東京国際映画祭

3Dメガネが涙で曇った・・・という書き出しを考えていた。 満員の急行から、自由が丘で各駅停車に乗り換えさえしなければ、この書き出しで始め、「Pina/ピナ・バウシュ」について、そしてヴェンダースとの出逢いについて、熱く語れていたことだろう。当日券…

ぼくは磯に住むタコだよ

サザエも、ホタテも、クラゲもワカメも、イカもみんな大好きだ。皆と仲良くなりたい。皆に触れたい。でも触れられない。 ゆらゆら帝国がまさに「タコ物語」で歌っているように、コミュニケイションの困難さとは「触れたいけど触れられない」というようなこと…

ロック

昨日は3年ぶりに友人のN氏に会い、浅草できめた。 天ぷらの「大黒家」の天丼に舌鼓を打った後、浅草寺周辺をブラブラと歩き、「浅草ロック座」でロックにきめた。その後、上野まで歩き、友人のドラゴン氏と合流。 不忍池近くの焼き鳥屋でビールを一杯飲ん…

岡村靖幸

昨日ナカガワ君に借りた「snoozer」2007年12月号(64号)の特集「日本のロック/ポップ・アルバム究極の150枚」。 その第7位に「岡村靖幸」の『早熟』(1990)が選ばれているのだが、「岡村靖幸」という固有名詞は今までまったく知らなかった。 早速、Youtube…

甘かった

甘かった。ほんとうに甘かった。 東京国際映画祭の「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」の上映にヴィム・ヴェンダースが来るということを、友人のナカガワ君に知らされて、今日初めて知った。当日券を逃しても今度上映されるときに見ればいいと、そう…

幻の映像

昼間のファミレスに真赤な服を着たオバケが出て来る映像を、小学生か中学生のときにテレビで見た記憶があった。あれは本当に怖くてずっと気になっていたが、作品については題名も何も覚えていなかったので、僕の中で幻になっていた。 先日、黒沢清の「降霊」…