暗黒街の図書館

夜7時くらいだろうか。昨日、人通りの少ない真暗な坂を抜けて、既に閉館している図書館の前を通ると、入口の自動ドアに「ファーブル昆虫記」が立てかけられていた。
「きっとブックポストを知らない小学校1,2年生の、勉強熱心なぼうやが置いていったんだろう」と僕は当然のごとく思い、「ヘンタイやスキモノにイタズラをされるといけないしな」と、それをブックポストに入れておいてあげた。
そうして歩きだしたとき、僕はふと思った。「ほんとうにぼうやが置いたんだろうか?」
いまどき「ファーブル」を借りる小学生がいるだろうか。これは罠ではないか。事件に巻き込まれなければいいのだが。