5月31日 かしぶち哲朗

夜、高円寺のレコード屋で2枚ジャケット買い。1枚は家の軒先で男がギターを弾いているのを子ども2人が見ているのと、もう1枚は「speed」「drug」と書かれたレーシングカーがのっているもので、レジへ持っていくと「なにか音楽やられているのか」 聞かれるので、「なにもやっていない」と答えると、どうやらレーシングカーの方はふつうはサンプリングをする人たちが買うようなものらしい。「なぜ買ったのか」聞かれたので、「まったくわからないがジャケットで勘で買った」と言うと、「まったくわからないものに金を出すあなたの心意気に何かプレゼントしよう」と言う。
続けて「どんな音楽が好きなのか」聞いてくるので、「好き嫌い語れるほどまだ音楽はわからない、音楽については何も語れない」と控えめに言うと、それでも聞いてくるので「カン」と答える。「ケイエーエヌのKANか?」と聞くので「ドイツのCAN」と答える。
「CANを出されるとややこしくなる」、「あなたのさっき買ったのは1枚は音楽ではないし、もう1枚はCANとはまた全然違うから」と言いながら、段ボールの中を漁り、途中映画の話しなどしながらプレゼントしてくれたのは、かしぶち哲朗の「リラのホテル」だった。「いまの若い子たちはバカだからかしぶちさん聞かない」言う。
立ったまま色々な話をした。「ものをつくる人がずっと高円寺にいると駄目になる」とか「高円寺はぬるま湯のようなもの」とか「高円寺には磁場があり、本当にすごいやつは磁場からあっさり出ていく力を持っている」といった話から、「最近の高円寺はつまらなくなった」「高円寺には何かやばいものがありそうで、実はなにもないという魔物が住んでいる」といった話。「80年代や90年代の高円寺にはほんとうにすごい店や人がいて、たとえば深夜1時までやっているパン屋があって、夜中に行くと1/4にカットしたパンを試食させてくれた。今はつぶれてファミリーマートになってしまった」といった話から、1時間近く話して、結論としては、「君たち若者にはもっとはっちゃけてほしい。思わず2度見してしまうようなものを売ったり作ったりして、僕を驚かせてほしい」ということだった。
ほんとうに元気が出たし楽しかった。