2月5日 片山慎三『さがす』

新宿テアトルで片山慎三『さがす』。

冒頭、疾走する楓(伊東蒼)に並走するカメラは、

恐らく彼女とは反対車線を走り、かなり引いた画角で彼女を画面におさめているので、

通行人や車両が画面手前を横切る。

やがて楓は横断歩道を渡って、こちらのカメラに向かって走って来るのだが、

通行人たちはカメラを避けるようにして歩いて行く・・・

間もなく、通天閣、そして職業安定所が映し出され、

この映画が大阪・西成を舞台とし、

それだけでなく、実際に西成で撮影されたことがわかる。

職安では、画面手前で窓口に向かう伊東蒼に対して、画面奥では喧嘩が始まっている。

彼らがエキストラなのか、ほんとうにこの職安に来ていた人々なのか?あの猫は?

 

「指名手配犯」「首吊り死体」といった共通項を取り出すまでもなく、

これはもう『(秘)色情めす市場』である。

街角でのビラ配りのショット、

激昂する伊東蒼の近くまで寄り、彼女を見つめニヤける自転車のお爺さん。

複数の通行人たちがカメラを見る。

あるいは、今池駅での素晴らしいワンシーンワンショット。

果敢で、豊穣な画面が連鎖し、ただただ戦慄するほかない。

果敢であるというのは、70年代には無かった、

あべのハルカス」を見上げたワンショットがこの映画に存在し、

現在の大阪そして西成、

映画の内と外を同一画面におさめようとしていることが明らかだからだ。

 

撮影中何度も絡まれ、「雑魚が」と言われたという。

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