新宿TOHOで岸善幸『前科者』。
森田剛は『ヒメアノール』で唐突になにかの塊となってスクリーンに現れ、
わたしたちを戦慄させた。
ただ物体が画面の中にある。
ある時期に固まってしまった顔面、後頭部。
笑いや涙や何かの凄まじい感情の流動の最中に、灰に埋もれ、
生きたままミイラとなってしまった男。
顔面には、複数の深い皺が刻まれている。
あるいは、夜のうちに氷結してしまった渓流の滝・・・
顔面はもはやそれを使って何かを言い表すため、表情をつくるためのものではなく、
それ自体が画面の中のもうひとつの画面となる。
だからこそ、固まってしまった顔面には、あらゆるすべての表情が可能。
この映画の中では、森田剛だけが真実のようである。
有村架純「好きな食べものは?」
森田剛「ラーメン」
そして顔面は溶け、液体となる。