距離

Youtubeの「〇〇してみた」の動画やその他諸々を見るとき、自分で自分を撮るということがいかに難しいかが分かる。
大概、そこには他人が入り込む余地がなくて、いやらしく、痛々しいものになってしまう。

クリント・イーストウッドさん、ジョン・カサヴェテスさん、北野武さん、真利子哲也さん「極東のマンション」、N氏のツイッターのアイコン、ももいろクローバーZの佐々木彩夏さん(ピンク)のブログ「あーりんのほっぺ」・・・はしかし、自分で自分を撮っていながら、全くいやらしさを感じさせない。皆、自分自身に対して距離をとることに見事に成功している。

N氏のアイコン。画面からあふれんばかりの顔。カメラと自分との物理的な距離をゼロに近づけることによる過剰さは、そこに自分との距離(ズレ)を生じさせる。これはN氏であってN氏ではない。そしてN氏はカメラを見ていない。まるでそこにカメラがあることに気付いておらず、偶然映ってしまったかのようだ。ATMのカメラに映り込んでしまった指名手配犯のようなさりげなさは、見事だ。

ブログ「あーりんのほっぺ」。毎回、異常なほどにダラダラと長い文章のその長さには距離(ズレ)がある。天然なのだろうか。いや違う。自分を撮った同じような写真を2枚連続で載せる「技」には、明らかに意図的な、しかしすごくさりげない距離が生じている。天然ではない。そして、ダウンタウンDXに出演したときのこと(http://www.youtube.com/watch?v=OEh30MKwaJU)。彼女がぬいぐるみと会話をする様子を、松本人志に「いろんな薬飲んでるからね」と言われる。このとき、普通ならば否定の照れ笑いを見せてしまうであろうところ、彼女は松本が何を言っているか分からないような「?」という表情をする。これは明石家さんまがよく見せる「技」ではないか。徹底して天然のフリをする。彼女であって彼女ではない。どうして中学三年生でこんなことができるのだろう。

N氏なのかN氏ではないのか、彼女なのか彼女ではないのか、僕らを宙吊りにしてしまうような、自分との絶妙な距離を保っていて素晴らしい。