3月4日 パク・チャヌク『お嬢さん』

 帰り、TOHOシネマ新宿でパク・チャヌク『お嬢さん』。
最高に面白い。鈴木清順ベルトルッチタランティーノを思い出す。ホン・サンス『今は正しくあのときは間違い』のキム・ミニが主演なので、「同じことを2回繰り返す」ことのホン・サンスとの違いについて考えずにいられない。同じ回に成海璃子も見に来ていた。
 新しくできた歌舞伎町のツタヤに寄って帰る。雑居感、異邦感がすごい。かつての新宿ツタヤにあったビデオの在庫がちゃんと受け継がれているのかどうかといった疑問はとりあえず置いといて、レンタルビデオ屋はやっぱりこうでなければならない。
 無責任なエレベーター。冬から春への変わり目ということもあって、一層不安になる。まだあまり知られていないせいか、人も少ないし、僕が中学生か高校生くらいのときの曲が(恐らくかなり意図的に選ばれて)かかっている--たとえば手嶌葵ゲド戦記の主題歌とかミスターチルドレンの旅立ちの歌とか。さらに、8階や9階なので、窓から見える歌舞伎町や新宿がだいぶ下にあって、喧騒がミュートになる--丹生谷貴志吉田健一についての文章で、ちょうど飛行機の中の「奇妙な静けさとざわめきとひしめき」と書いたような。外はものすごい轟音と速度であるはずなのに中は恐ろしく静かであること、のような不安。
 東京である。無責任、雑居、名前も知らない異性とまぐわい交わること、プラスチックとセックスをしているようであること、酒に酔い、ビルの隙間に突っ伏すこと、嘔吐、複数の者に殴り、蹴られ、棄てられること、もうあの頃には戻れないこと・・・ここにはどこか90年代のような異邦感がある。レンタルビデオ屋はこうでなくちゃいけない。