9月6日

オーディトリウムで山本政志『闇のカーニバル』。最高に面白い。
シーンからシーンへの移り変わりが狂っている。しかしありがちな青春や反動といったものの輪郭には収まらない繊細さがある。つまりは、切るべきところで切り、引くべきところで引く。
新宿。自らの化け物のような性欲のはけ口を探してさ迷う女、はけ口は見つからず、さ迷うほど空回りし、滑稽になるだけである。拳銃を持っても何も解決しない。優しすぎる。愛おしい。
数年前、山本政志監督と2回ほど飲ませてもらう機会があった。その時点で私は山本監督の作品を一本も見たことがなかったし、その後も『アルクニ物語』しか見ていなかった。その酒の席で監督は、何か既存の映画のシーンだったか今後の演出プランだったかうろ覚えなのだが、たしか、「川でおばあさんがオマンコを洗っている」という内容のことを語り、さらに「オマンコを洗う」ということに憑かれたように繰り返し語っていた覚えがある。そのときはその「洗う」という言葉にやや妙な新鮮さを感じつつも特に気に止めず、あるいは、ただの馬鹿話として聞いていたが、『闇のカーニバル』を見た今、その川のシーンはさぞかし感動的なものになり得ただろうという確信がある。もっと早く見ておくべきだった。