9月4日 グリフィス『ドリーの冒険』

2時間車の運転する。
この致死的な鉄の塊をビュンビュン飛ばし交わすというのはまったくばかげている。あらゆる記号が五感に飛び込んできて処理しきれなくなり、発狂、そして死、というイメージしか浮かばない。これを皆いつの間にか当たり前のような顔をして乗りこなし始めるのだから、人間は心底恐ろしい。ルールもクソもない。荒唐無稽だ。これは人生初のほんとうの通過儀礼となるかもしれない。アフリカのとある部族のバンジージャンプのように。
身体感覚が前方左右2メートルほど拡張された感じがする。「円」だ。半径2メートルに入ってすれ違う人間ひとりひとりの身体の隅隅をまさぐることができる感じがする。右側から太刀魚が飛んできてもとっさに右手で弾き落とせる自信がある。身体の革命だ。
ツタヤで借りた「はじめての映画」なる映画史初期の短編を集めたビデオを見る。エジソンチャップリンの短編などがある。その中に、「アメリカン・ミュートスコープ&バイオグラフ社」なるプロダクション製作の1908年の作品『The Adventures Of Dollie』と題された作品がある。これが完璧で驚く。
フレームイン/アウト(なぜ親子3人は同じフレーム内に収まろうとしないのか!?)、すれ違い、奥行き、疾走、木々の揺れ、寝そべる女性、下り坂、そして唖然とするほど正常に作動する「樽」という装置・・・
調べてみるとなんとこれはグリフィスの処女作であると!