やっぱり光石研

園子温の「ヒミズ」を見た。
染谷君も、二階堂ふみももちろん良かったし、渡辺哲も、でんでんもいいけれど、やっぱり光石研に痺れる。下り坂をトボトボと歩いてきて、染谷君に向かって最初に放つ「かあちゃんは?」の一言だけで、この父親のあらゆることが分かってしまうようだから、ほんとうに吃驚させられる。「ありがとう」と言いたい。
二階堂ふみの着替えのシーンがカットされて、キャミソールどまりなのはいかがなものかと、相米慎二の「台風クラブ」が何度も頭をよぎって、思う。それと同じように、光石研が下り坂をトボトボと歩いてくるショットを、ロングショットでもう少しゆっくりと見ていたいと思ったりするのだが、「ヒミズ」は、そして園子温の映画は、第一に、園子温自身の心象(脳内)風景であり、リズムなのだろうから、それを言っても恐らく始まらない。

ヒミズ「決まってるんだ」 住田「そうか・・・決まってるのか」 と言って、住田が自殺して、原作(漫画)は終わる。
どうしようもない現実が、「決まっている」ときにどうするかという問題。佐々木敦の「未知との遭遇」にそれに対するある種の答えが提示されているのだが(漫画「ヒミズ」も引用されている)、面白いことに、映画「ヒミズ」のラストが、その答えに近いものに(漫画と)大きく変えられている(詳しくは「未知との遭遇」を読んでいただきたい)。
・・・・だから、住田(染谷君)が「住田!!がんばれ!!」ともうひとりの自分に向って叫びながら、土手をゆっくりと走り出すラストは、すごくうれしい。