友人がtwitterで紹介していたINA『つつがない生活』読む。
「10年後自分が何をしているのか」あるいは「10年前何をしていたか」、をふと想起させてくれる作品は偉大である。
主人公イナヲと妻ユウ、そしてユウの歳の離れた妹カナミの親子のような3人暮らし(ユウとカナミの父親は不在である)の日々の生活が描かれているが、ここには何かダイナミックなものがある。
イナヲに勉強を教わっていたカナミは、勉強に飽き中断して、イナヲと2人で「絵しりとり」を始める。
「絵しりとり」は、相手に伝わるかもしれないし、伝わらないかもしれない。誤って受け取られるかもしれない。それでも、確固たるものがあるわけでもない自分のグニャグニャのこの絵を相手に受け渡していく。そして相手の絵をまた受け取ろうとする。
それはまた、カナミからイナヲに渡される手紙であり、イナヲがカナミに見せたいラピュタでもあるだろう。
『つつがない生活』には、「誰かに何かを渡そうとすること」が通底している。さらに、人物たちの吹き出しに手書きで書かれたグニャグニャのセリフ文字によって、「しかし、伝わらないかもしれない」という揺らぎを帯びていて、現実の生にあまりに似ている。それでも受け渡そうとすることは愛と呼びたくなる、傑作だ。