女の人が乗って来て前に立った。
ドレスが薄い黄色で 柔らかい布の素材
ボディラインがはっきりと 乳房と腰と
尻は見えないが尻 そしてすぐに腹があり
腹の起伏はどれだけ見ても見尽くすことはできず
唐突にフィクションが立ち上がり 夏の歌があり
映画の中でマギー・チャンが着ていそうと思った
目を閉じて 眠った演技をして 黄色をもう一度思い出し
人が服を選び 買い それを着て街へ出ることの喜びを悟った
新宿で人々が降り 女の人は隣に座った
うつらうつらして
窓に反射するドレスの形を 片目で時折追った
何もいらないし 何もあげられないが
このドレスで
ただどこかへ連れて行ってほしいと
笑い泣きながら眠った
荻窪で目を覚ますと もう誰もおらず
いつかスーパー銭湯の脱衣所で祖父が「GUは餓鬼の服」と言った