6月20日

帰り、千駄ヶ谷でうつらうつらしていると(稲川淳二

女の人が乗って来て前に立った。

ドレスが薄い黄色で 柔らかい布の素材

ボディラインがはっきりと 乳房と腰と

尻は見えないが尻 そしてすぐに腹があり

腹の起伏はどれだけ見ても見尽くすことはできず

唐突にフィクションが立ち上がり 夏の歌があり

映画の中でマギー・チャンが着ていそうと思った

目を閉じて 眠った演技をして 黄色をもう一度思い出し

人が服を選び 買い それを着て街へ出ることの喜びを悟った

 

新宿で人々が降り 女の人は隣に座った

うつらうつらして

窓に反射するドレスの形を 片目で時折追った

何もいらないし 何もあげられないが 

このドレスで

ただどこかへ連れて行ってほしいと

笑い泣きながら眠った

 

荻窪で目を覚ますと もう誰もおらず

いつかスーパー銭湯の脱衣所で祖父が「GUは餓鬼の服」と言った