6月12日 偉人と乞食

 微妙に時間があったので図書館の雑誌コーナーで『エピステーメー』の映画特集を立ち読みしていて、トリュフォーチャップリンについての文章で、チャップリンは2種類の人間だけ撮った、それは「偉人」と「乞食」で、前者は「私は何者なのか」と問い後者は「私は存在するのか」と問う、といったことが書かれた冒頭だけを読み、今さらになって、素晴らしい書き出しだったなと思う。
 このアパートに住み始めて4年ほどたつが、4年間たびたび近所で渋谷系のギャルの格好をした恐らく乞食のおば(あ)さんを目撃してきた。それがここ数週間、遭遇のスパンが徐々に短くなってきており、週に3,4回、多い日には3度すれ違うということもあって、私が外出している間、部屋に入っているのではと思うくらいよく会う。「世にも奇妙な物語」ならば、実は私がそのおば(あ)さんだった、というオチだろう。