10月29日

昼、関内ラーメン二郎で小ブタ
丹生谷貴志「光の国」を読む。すごい面白い。
その中で引用されているクリフォード・D・シマックの「逃亡者」―木星探査員のリーダー・ファウラーは、隊員たちを転移機で木星の生物・ローパーに変え木星に派遣するが、誰ひとり還ってこず皆行方不明になる。ファウラーは決断し、愛犬・タウザーと共にみずからローパーになって木星に行く。


「来たな、相棒!」
 それは言葉ではなく、言葉以上のものだった。彼の頭脳の思考の象徴が、言葉などでは決して持てない深いニュアンスをもって、犬の思考の象徴と相通ずるのだ。
「どうだ、タウザー」とファウラーはいった。
「すてきな気分だよ」とタウザーが答えた。「小犬の時代みたいな気分だ。近頃は、おれもすっかり老けて、がたがたになったみたいだったんだが。脚はこわばってくるし、歯はだめになって、ろくな役にはたたないし。骨をかじるのさえ辛い始末だった。おまけに、蚤のやつが地獄の苦しみでね。今までは蚤なんぞ気にもかけなかったもんだのに。まったく、若い頃は、蚤の一匹や二匹なんぞ、ものの数じゃなかったんだ」


「この音楽」とタウザーがいった。
「うむ、それがどうした?」
「この音楽は振動だよ」タウザーが続けた。「アンモニアの落下の振動だ」
「タウザー・・・振動だなんて、おまえは、振動ってなんだか知っているのか」
「知っているさ」タウザーがオウム返しに答えた。


「おれは帰らない。帰らないぞ」とタウザーがいった。
「おれもだ」ファウラーが答えた。
「帰ったら、おれはまた犬にされてしまう」タウザーが続けた。
「そしておれは、人間にされてしまう」とファウラーはいった。