「ゴーストライター」 ロマン・ポランスキー

元英国首相アダム・ラングの自伝執筆を依頼されたゴーストライターユアン・マクレガー)。彼には名前がなく自らを「ゴースト」と名乗る。

彼は執筆のためにラングの滞在する孤島を訪問する。ロンドンから、ジャンボジェット、小型ジェット、フェリー、自動車を乗りついでやっとたどり着いた孤島、そしてラング邸。大西洋のどこかに存在するのだろうけれど、それがどこなのかは全く判らない。ラング邸から見える風景は、荒涼とした浜辺と冬の海だけで、他には家一軒見当たらない。空はずっと曇っていて薄暗い。

彼はラング邸で見つけた「謎」の痕跡を辿っていく羽目になる。しかしもちろん、一足飛びに「謎」の真相にたどり着くことなどできない。不明瞭な視界の中を、徒歩で、自転車で、BMWで、フェリーで、小型ジェットで・・・一歩づつ、ゆっくりと迫っていくしかない。島の老人も、グーグルの検索も、BMWのカーナビも、直接真相には連れて行ってはくれず、それは小さな一歩にすぎない。僕らも「謎」が「謎」なのかさえよく分からないまま、「乳輪が大きいとかそうゆうオチだろう」という具合に真相を予想することももちろんできずに、ゴーストと共に一歩一歩進むしかない。

冒頭からの見事なワンショットワンショットは、しかし、着実に真相に迫っているということを僕らに感じさせてくれる。
あるワンショット(一撃)で死んでしまうかもしれない。それでも、一歩づつ真相に向かって、命がけで進むその一歩一歩、ワンショットワンショットが重要で、魅力的なのだ。

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