朝ごはんのパンを買ってきた

近所にストリップ小屋がある。
タンバリンを必死に叩く音が頻繁に聞こえてくるし、店前の大きなポスターも色鮮やかですごく工夫されている。小さな店だけれど、店長の一生懸命さが伝わってくる。

ジョン・カサヴェテス「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」(1993)の主人公コズモ(ベン・ギャザラ)も小さなストリップクラブ「クレイジー・ホース」のオーナーをやっている。その小さな店では、数人のストリッパーたちがオッパイをさらけ出して楽しそうに踊り、胡散臭そうな芸人「ミスター・ソフィスティケーション」が何でもないトークを繰り広げる。そんな店だ。コズモは店を建てるために借金をして、その借金を全額返済した翌日にギャンブルで大負けし、また借金をつくって人殺しをせざるを得なくなり、命を狙われ・・・それでも常に自分の店のことだけを考え、稼いだ金は全て店につぎ込む。「西海岸の大ボス」、中国人ブッキー(ヨボヨボのオジイチャンだった)を殺しに行く途中も、公衆電話から店に「ショーはうまくいっているか?」と電話をかけ、店のことを気にかける。自分が死ぬとか生きるとか、それさえどうでもよくて、ただ今日店が繁盛することだけを考える。明日とか明後日とかを見越した打算的な考えは一切しない。それが、なぜだろうか、すごく魅力的なのだ。

明日の朝ごはんがなかったのでコッペパンを買ってきた。明日のことなんか考えず、思い付きもせず、「ストリップ小屋」のために、今自然に体が動けば素敵だ。