n-1 ― 「ももクロ春の一大事2012 横浜アリーナまさかの2DAYS」

 中央にはメインの円形ステージがあり、そこから両サイドに2本の通路がせり出している。舞台は360度観客に囲まれ、いわばストリップ小屋のような構造になっているわけだ(もちろん中央の円形ステージは回転する)。そして天井には映像を映し出す、決して大きいとは言えない4面モニターが吊られている。巨大なアリーナにおいては、しばしば映像による演出がライブに豊かさをもたらす鍵になってくるような気がするが、巨大なスクリーンを置く場所などそこにはもちろんない。天井の4面モニターを確認する際は仰瞰しなければならないので、映像による演出はきっと希薄なものになるだろう。とりたてて目を引く装置なども見当たらない。
 果たして質素な舞台で、脱ぐわけでもない彼女たちが、この巨大な空間を満たすことができるのだろうか?ライブハウスほどの広さが限界なのではないだろうか?
 そのような疑問を抱いているその刹那、我々が知覚するスピードをはるかに上回る速さで、いつの間にやら彼女たちはステージの中心に立っている。サイヤ人のような戦闘服を身にまとい、スカウターを装着した彼女らは「Chai Maxx」を踊り始めており、我々は既に立ち遅れていることに気付かされる。そして2曲目「DNA狂詩曲」で、もうスカウターを外してしまっている彼女らの本気に、3曲目「ピンキージョーンズ」のジャッキー・チェンを凌駕する間違いのない身体性に、先ほどあのような疑問を抱いてしまっていた自分が惨めで仕様がない。
 演出の引き算が行われ、彼女たちは自らの身体性で勝負をかける。シンプルな構造の舞台において、映像や照明、衣装の過剰さは排され、−1、−1、−1・・・と演出の引き算が行われていった結果、自らの身体だけが残された彼女たちは、みごとに、ほとんどその身体性のみで巨大なアリーナを満たしてみせる。自らの身体のみで勝負しようとする彼女らのその姿勢が、どうしようもなく感動的だ。一体どうしたらいいのか。サイリウムがまだ光ってやがる。