8月22日

女子校的スキンシップで大勢の頑固じいさんばあさんを統率するその天才を観察することをほとんど唯一の楽しみとして、年下の小島瑠璃子似のかわいいラインリーダーがいる工場に半年通っている。が、望み通りにお目当てのラインに配属されない日もあって、今日も島流しにあった。
広大なフロアの隅で一人で作業する。たまにフォークリフトのおじさんが通るだけで周りには誰もいない。
朝8時半に作業場に行く。昨日の夜8時半から作業していた夜の人と交代する。羅生門のおばあさんが作業をしている。おはようと言って交代する。おばあさんが「からだがわるいからあまりやっていない」と言う。ラジオ体操をして作業を始める。
機械からカセットが5つずつ流れてくるのでそこにものを装填する。これを繰り返す。夜の8時半まで機械に向き合う。
午前中はこれからの楽しいことなど考えながら作業する。すると勃起をする。薄黄色の作業着がほとんどパジャマほどの薄さなので周りから見るとはっきりと判る。しかし周りには誰もいないので気にする必要は無い。これを何度も繰り返す。
2時間半〜3時間に一回、休憩を取るように告げる誰かが来る。
午後、機械とだけ向き合い続けていると発狂しそうになる。ときどき視界の隅に入る送風機のパイプが、ちょうど高校球児が帽子をとってお辞儀をしたときのような形に一瞬見える。その都度ゾッとして驚く。これを何度も繰り返す。
夜、発狂しそうになる。5個のカセットが流れてくるとき音が鳴るが、流れてこないこともある。30分間なにも流れてこないこともある。しかし流れてくるときはこれでもかというくらい流れてくる。機械の微妙な音の違いで、流れてくるか流れてこないか判るようになる。流れてくるか流れてこないかの機械によるさじ加減は下痢のようで、苛立ちが高まる。
「こんなに生産する必要はないだろ!」という言葉を、監視カメラで見られているかも知れないので、カタカナの「二」の字の口にして、腹話術のように発話しながら作業する。
8時半になる。夜の人がやって来る。お疲れ様と言って交代する。「おはようまだやろう」が流れる。